老後の安心のために 任意後見契約と遺言書の作成~老後の保険~
ご主人がお亡くなりになり、相続が発生した場合に、ご自宅の土地建物の名義をどうするか。
同居している子がいる場合は、奥様の名義に相続登記してもいずれは子供への相続登記が必要になるのだからと、その同居の子の名義に登記をしたいと考える方もおられますが、同居していない子どもがそうは考えない場合もあります(遺産分割協議ができない場合があります。)。
また、そもそも、夫婦が長年にわたって、子育てをしながら、苦労して、協力して手に入れた自宅や財産なので、まずは奥様名義にしておこうと考えるご家族も多いようです。人生100年時代とも言われておりますので、自宅不動産を処分して施設への入所費用とする必要が生じたり、生活費とする必要が生ずる場合も多いと思います。
人生100年と考えると、認知症などによる判断能力の低下のリスクが発生します。判断能力が低下してしまった場合は、自宅不動産を処分するには成年後見人を選任して契約をする必要が生じます。その対策として、元気なうちに家族など信頼できる人を後見人とする任意後見契約を締結しておけば、安心です。
老後の保険として、任意後見契約についてご検討してみてはどうでしょうか。幸いに、任意後見が発動される必要が生じなければ、それが一番です。まさに保険のようなものです。
そこで、今回は、任意後見契約と遺言について、簡単に説明させていただきます。
なお、当事務所において、任意後見契約及び遺言書作成支援業務をしております。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
任意後見契約
1 なぜ任意後見契約か
将来何らかの原因(認知症、脳梗塞など)により、判断能力がなくなった場合、金融機関が預貯金口座を凍結することがあります。そうすると、生活費、介護費用、入院・施設への入所費用が下せなくなります。
また、施設に入所し、その後の生活費をねん出するために、自宅不動産を売却する必要が生じても売却できません。売買契約を締結するには判断能力があることが必要であり、無効な契約となって問題が発生するためです。
正式な契約を結ぶ場合は、法律上の権限が必要であり、家族であるだけでは権限はありませんが、後見人は本人の代理人として権限があります。
その対策として、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、信頼できる人に後見人になってもらう契約が任意後見契約で、この契約によって、安心・安全な老後の生活が送れます。
本人が元気なうちに、当事者間の契約でその内容を決めますので、本人の意思をきめ細かく反映した支援を受けることができます。
2 任意後見契約は安心か
まず、ご家族などご自分が信頼できる人に後見人になってもらうことができます。
また、ご自分が元気なうちは後見は開始されません。判断能力が低下した場合に、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらってから開始されます。
ですから、判断能力がなくならなければ発動されることはありません。将来の安心を得るための保険のようなものと考えることができます。
また、後見事務の内容は当事者間の契約によります。その契約によってあらかじめ決めた内容の財産管理や身上監護がされているかについては、任意後見監督人のチェックが入るので安心です。
3 任意後見契約でしてもらえることは
支援してもらいたい内容の代理権目録を作成します。
例えば
①預貯金の払い込み、払い戻し、口座の開設、解約
②年金、家賃等の受領
③保険料、税金、公共料金、家賃、施設費等の支払い
④生活費の送金
⑤証書等(登記権利証、実印、個人番号カード等)の保管
⑥介護契約、福祉契約、入退院手続き、施設入所契約
⑦保険の締結、解除、保険金の請求
⑧不動産の売却、賃貸
など
4 締結した任意後見契約の解除は
任意後見監督人の選任前は、公証人の認証を受けた書面によりいつでも解除できます。
また、既に任意後見監督人が選任されている場合は、正当な理由があれば、家庭裁判所の許可を得て、解除できます。
遺 言
ご自分の財産をだれに、どのように分けるか。遺言があれば、遺言が優先されます。
例えば、老後の面倒を見てくれた人や、任意後見人となって世話をしてくれた人に多くの財産を残すことができます。
※ 兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」を請求する権利があります。
※ 遺言は取り消すこと(撤回)ができます。
死後事務委任契約
子どもや家族がおられない方などは、任意後見契約や遺言書の作成と併せて、死後事務委任契約についてもご検討されてはどうでしょうか。
※ 任意後見契約は本人の死亡により終了してしまいます。
契約内容は、例えば、
①医療費の支払い
②施設費の支払い
③葬儀や納骨、永代供養
④家財道具の処分
など