民法等の改正と相続登記の義務化について
令和3年4月に、民法と不動産登記法が改正されました。
改正内容は多岐に渡りますが、主な改正の一つとして、相続登記の申請が義務化されました。今回は、その改正の背景と義務化の概要について説明します。
【改正の背景】
平成29年12月、現在は日本郵政の取締役兼代表執行役社長である増田寛也氏が座長を務めた産官学の有識者でつくる「所有者不明土地問題研会」が、いわゆる所有者不明土地の面積は、増加防止の取組が進まない場合、2040年には全国で北海道本島の面積の9割超に当たる約720万ヘクタールに達してしまい、それに伴う経済的損失が累計で約6兆円にも上るとの最終報告を公表しました。
所有者不明土地の増大は、公共事業や災害からの復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引も阻害されるほか、土地の管理がされずに隣接する土地にも悪影響が発生するなど深刻な社会問題となっており、その対策として民法等が改正されたものです(改正内容は、共有制度の見直し、財産管理制度の見直し、相隣関係の規律の見直し、一部相続法に関する見直しなど多岐に及んでおり、併せて相続土地国庫帰属法が創設されました。)。
【相続登記の義務化の概要】
相続登記の義務化の内容は、不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けるもので、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するものです。
相続人がすべき登記申請の内容については、①3年以内に遺産分割が成立しなかったケース、②3年以内に遺産分割が成立したケース、③遺言書があったケースに分かれます。
また、過料については、「正当な理由」がないのに登記申請義務に違反した場合が適用対象とされ、「正当な理由」の具体的類型については、今後、法務省の通達等で明確にされる予定になっています。
なお、相続登記の義務化については公布日(令和3年4月28日)から3年以内に施行されますが、施行日前に発生した相続に関しても申請義務が課せられる点に注意が必要です。施行日前に相続が発生して相続による所有権の取得を知った場合は、施行日から3年以内に相続登記を履行する義務を負います。一方で、相続人が申請義務を簡易に履行することができる方策として、相続が開始した旨と自らがその相続人である旨を申し出る制度も設けられています。
相続登記を放置した場合は、当ホームページの相続登記等のページに詳細に記載しているとおり、①相続不動産の処分や融資を受けることができない。②法定相続人が大幅に増え、相続登記のコスト・費用が増大する。③認知症を発症した人や行方不明者が生じた場合に遺産分割協議に支障が生じる。④不動産の共有化により権利関係が複雑化する。⑤相続登記をしないと法定相続分以上の権利を第三者に主張(対抗)できないなどのデメリットがありますので、相続登記の義務化にかかわらず、相続が発生した場合は早めに登記を申請することをお勧めします。
アスニー司法書士事務所では相続登記に関するご相談を無料でお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。
【令和3年12月16日補記】
相続登記の申請の義務化関係の改正についての施行期日は、令和6年4月1日とされ、また、相続土地国庫帰属制度の創設は、令和5年4月27日施行とされました。