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相続した土地(負動産)を手放すことができる法律について

12月28日

相続した土地(負動産)を手放すことができる法律について

相続した土地(負動産)を手放すことができる法律、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「相続土地の国庫帰属法」といいます。)の施行日が、本月14日の閣議で令和5年4月27日になることが決定されました。

 不動産登記簿によって所有者が直ちに判明しない土地や所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地が、平成29年の国土交通省の調査では22パーセントにも達しており、公共事業、災害からの復旧・復興事業、民間取引などの土地の利用を阻害し、所有者不明土地問題は大きな社会問題になっているところです。

 そして、土地所有者不明土地の発生原因の主要な一つが相続登記の未了であり、相続した土地の所有権を一定の要件の下で手放すことのできる制度が必要であることから、相続土地の国庫帰属法が所有者不明土地の発生防止の対策の一つとして制定されたものです。

 私事ですが、義父が昭和の土地は値上がりするものだと信じられていた時代に、広島市中心部からJR沿線ではあるもののかなり離れた場所に住む予定はない宅地を購入しており、その処分に大変困った経験があります。

 周りも山林が大規模開発され宅地造成されていましたが、全く家が建っていません。おそらく、投資目的で購入された方もいたのではないかと思います(あるいは、造成したが売れなかったのかもしれません。)。そんな土地に何十年もの間、なんでこんなに高いのかと思う固定資産税を払い続けており、義父の兄弟を頼って広島市内の不動産会社に売却の依頼をしていましたが一向に売れずに、いずれは私の子どもたちの負担になるのかと心配していました。

 幸いにも、小さくても地元に密着した不動産業者に頼んだほうがよいのではないかと考えて地元の業者に依頼したところ、それからしばらくして買い手が見つかり、ほっとした経験があります。

 また、私は小さなみかん畑(畑といっても山です。)を相続しており、私が小・中学校の頃までは一定の収入になり家計を助けてくれたのですが、今では周りのみかん畑も全く放置されている状態で、私の子どもたちが将来相続することになるので、いったいどうしたものかと心配しているところです。

 そういったこともあり、相続土地の国庫帰属法に対して、私自身も大変期待しているところであり、また、所有者不明土地の発生防止の観点からも必要な法律ですが、一方で、土地の帰属を受ける国の財政面での負担が増え、結局は国民の負担ともなることから、対策の効果と負担とのパランスが重要になります。ですので、期待はしていますが、今の段階ではあまりにも過度な期待はしないほうがよいのかもしれません。

 実際の運用の詳細は、今後、政令、省令及び通達等によって明らかになりますので、今回は法律の基本的な内容について記載します。

1 制度の概要について

  相続等により取得した土地を法務大臣の行政処分により国庫に帰属させる制度です。なお、申請窓口については、法務局になるものと思われます。

2 承認申請できる者について

 土地を国庫に帰属させること(土地を手放すこと)の承認申請をすることができる者は、土地の全部又は一部を「相続等」により取得した者で、「相続等」には、遺産分割による場合や遺言による場合を含みます。ただし、遺贈の場合は受遺者が相続人の場合に限られます。

 なお、共有地の場合は、共有者全員が共同で申請する必要があり、承認申請者の中に相続等により共有持分を取得した者が存在する必要があります。

 制度の趣旨から、相続等により不動産の所有権を取得した者が申請できる者になり、例えば、土地をBさんから売買で購入したAさんは申請できません。

 しかし、父Xと他人のAさんが土地をBさんから購入して、父Xの持分を子のYさんが相続により取得した場合は、Aさんは売買により土地を購入した者であって相続等により土地を取得した者ではありませんが、YさんとAさんが共同申請することにより承認申請することができます。

3 承認される土地、されない土地について

 本制度は土地の所有・管理から免れる途を開くことで、ひいては所有者不明土地の発生を抑制することを目的とするものですが、先ほども述べたとおり国のコストが増えることから一定の制約が必要です。また、土地の所有者は所有する土地について管理責任を負っていますが、無条件に土地を手放せるとすると土地を適切に管理しなくなるモラルハザードを誘発することからも制約が必要となるとされています。

 そこで、相続土地の国庫帰属法は、(1)国庫帰属の承認申請自体をすることができない土地と、(2)承認申請しても承認されない土地を規定しています。

 なお、政令や省令による部分がありますので、今後、運用の詳細が分かればまた記載したいと思います。

(1) 承認申請をすることができない土地

  相続土地の国庫帰属の承認申請自体をすることができない土地は次のとおりです。

 ① 建物の存する土地

 ② 担保権(抵当権など)又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

 ③ 通路その他の他人による使用が予定されている土地として政令で定めるものが含まれる土地

 ④ 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地

 ⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(2)承認されない土地

  次に、承認申請しても承認されない土地は次のとおりで、いずれかに該当する場合は、法務大臣は不承認処分をします。

 ① 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

 ② 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

 ③ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

 ④ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分することができない土地として政令で定めるもの

 ⑤ 上記のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

4 負担金の納付について

 承認を申請する者は審査に係る手数料を納付する必要がありますが、その他にも承認がされた場合は、負担金を納付しなければなりません。この負担金は、土地を手放し国庫に帰属させる者に、国が負担するその土地に関して生ずる管理や処分に要する費用の一部を負担させる趣旨のものであり、「国有地の種類ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額」とされています。

 なお、法務省のホームページには、あくまで参考としてですが、「現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円」との記載があります。

 以上、今回は法律の基本的な内容について記載しました。

 なお、申請窓口は法務局になる予定で法務局職員は非常に大変でしょうが、私は法務局OBとして法務局が本制度を円滑に推進してくれることを期待しています。また、本制度の運用の開始後は、司法書士として申請代理業務に取り組み、多くの人の問題解決に努めたいと思います。

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